難消化性オリゴ糖の有効エネルギ-量に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454126
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 奥 恒行 東京大学, 医学部(医), 講師 (50010096)
• キーワード: 難消化性オリゴ糖 / 難消化性糖類 / 有効エネルギ- / 発酵吸収 / 腸内細菌 / マルチト-ル / エリスリト-ル / ネオシュガ-

研究概要

本研究においては、難消化性糖類の有効エネルギ-量を発酵式に基づいて算出する方法を考案した。発酵式に基づいて有効エネルギ-量を求めるにあたっては、対象となる糖類の消化・発酵・吸収・排泄などの代謝的特徴を明らかにしなければならない。本研究では代謝経路が著しく異なるネオシュガ-、マルチト-ル、エリスリト-ルの代謝経路を明らかにし、発酵式を用いてエネルギ-を推算することの妥当性を検討した。
ネオシュガ-の消化・発酵・吸収、排泄、代謝などはすでに明らかにしている。マルチト-ルは一部が消化吸収されるのでその生体利用の経路は煩雑である。動物実験においてマルチト-ルの代謝経路はすでに研究されているが、ヒトに ^<14>Cーマルチト-ルを投与した代謝実験は行われていない。健常な成人男子6名に ^<14>Cーマルチト-ル50mCiを経口投与し、経時的に48時間まで呼気 ^<14>CO_2、尿、糞、腸ガス、血液を採取した。また、別の実験においてマルチト-ル30gを健常な成人男子10人に経口投与し、経時的に10時間まで呼気水素ガスを測定した。これらの研究によって、経口投与したマルチト-ルの約10%が消化され、約90%が腸内微生物で発酵を受けることが明らかになった。さらに、大腸粘膜に非常に弱いマルタ-ゼ活性の存在することを明らかにすると共に、大陽に送り込まれた未消化のマルチト-ルはこの二糖類水解酵素で消化されて利用される可能性がないことを証明した。
一方、四炭糖アルコ-ルであるエリスリト-ルを含む飼料を用いたラットの飼育実験、並びに ^<14>Cーエリスリト-ルを用いたラットにおける代謝実験から、経口投与したエルスリト-ルの90%以上が小腸から吸収され、代謝されずに速やかに尿中に排泄されることを明らかにした。これらの現象はヒトにおいても極めて類似していることを実証した。また、大量に摂取したときには消化管の吸収能に限界があるため尿中排泄率は低下し、大陽において発酵を受ける比率が増加することも明らかにした。エリスリト-ルの有効エネルギ-量は他の難消化性糖質甘味料に比べて極めて少ないことが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Tsuneyuki Oku: "Metabolic fate of ingested〔^<14>C〕ーmaltitol in man." Journal of Nutritional Science and Vitaminology. 37. 528-544 (1991)
• [文献書誌] Tsuneyuki Oku: "Influence of chronic ingestion of newly devloped sweetener,erythritol on growth and gastrointestinal function of the rats." Nutrition Research. 10. 987-996 (1990)
• [文献書誌] 奥 恒行: "新しいタイプの糖質の消化・発酵・吸収とその機能性" 科学と工業. 65. 275-283 (1991)
• [文献書誌] Tsuneyuki Oku: "Obesity:Dietary Factors and Control〔Caloric evaluation of rerducedーenergy bulking sweeteners(pp.169ー108)〕" etds.Romsos.D.R.et.Japan Scl.Soc.Press,Tokyo/S.Karger,Basel, 272 (1991)
• [文献書誌] Tsuneyuki Oku: "Proceeding of WHO symposium on Plants and Health for All〔Dietary fiber and new sugars〕" eds.Shigeaki Baba et al.Elsevier.Netherlands, (1992)
• [文献書誌] Tsuneyuki Oku: "Caloric Evaluation of Carbohydrates〔Evaluation of bioavailable energy of maltitol(pp.109ー123)〕" ed.Norimasa Hosoya Research Foundation for Sugar Metabolism,Tokyo., 257 (1990)