研究概要 |
平成2年度の研究において以下の知見を得た. 1.酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)含有細胞の脳内分布:aFGFの抗体を作製し,免疫組織化学的にaFGF陽性細胞の脳内分布を調べたところ,絶食下ラットではaFGF陽性細胞は第3脳室や脳室周囲器官に認められるが,ブドウ糖負荷ラットでは上衣細胞の免疫反応性が低下し,視床下部の外側野(摂食中枢),背内側核,室傍核等の神経細胞がaFGF陽性になることが判明した.2.摂食中枢ニュ-ロンに対する塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)の作用:摂食中枢ニュ-ロン活動を記録しながら電気泳動的にbFGFを投与したところ,aFGFの場合と同様,長い潜時の後長時間抑制された.膜透過性のディアシルグリセロ-ルも同様の反応を摂食中枢ニュ-ロンに引き起こすことから,FGFの作用にはプロテインキナ-ゼCの関与が示唆される.3.虚血による海馬錐体細胞壊死に対するaFGFの作用:浸透圧ミニポンプを用いて虚血5分後からaFGFを両側側脳室に持続投与したところ,虚血による砂ネズミ海馬CA1領域錐体細胞の遅発性細胞壊死は阻止された.4.脳内移植用細胞株の樹立:脳内移植に適した細胞の条件として,脳内で長時間生存し,導入した遺伝子を正しく発現し続け,なおかつ脳内で増殖しないということが必要である.これらの条件を満たす可能性のある細胞株について検討した結果,脳内で増殖せず,FGFにも反応しないで長時間海馬で生存できるヒトウイルムス腫瘍細胞G401にヒト正常11番染色体を導入したG401MC11細胞が脳内移植用細胞株として適していることが明らかとなった.
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