外界の刺激に応じて細胞内Ca^<2+>は上昇する。近年になりCa^<2+>がどの様に制御機能を果たしているか?につき検討を加える事が薬理学上の重要課題のひとつとなっている。本研究ではこの細胞内情報伝達の一局面を、Ca^<2+>とリン酸化をキ-・ワ-ドとし、これらがミオシン活性をどの様に制御するかの解析を行う。ここでミオシンを取り上げたのは(a)動・植物・下等生物を問わずあらゆる有核細胞に存在し、(b)運動性という重要な生理機能の最終的な担当分子であるという理由にもとずく。このミオシンは(I)直接Ca^<2+>により、and/or(II)間接的にキナ-ゼによるCa^<2+>依存性リン酸化により制御されるものに分類される。制御の様式には(I)Ca^<2+>により活性化されるもの(upーregulation)のみならず(II)Ca^<2+>より不活性化されるもの(downーregulation)が存在する。 本研究では、Ca^<2+>によりdownーregulationを受けるキナ-ゼを粘菌フィザレムより得てCa^<2+>結合蛋白質とミオシン軽鎖キナ-ゼをそれぞれ単一蛋白質にまで精製した。前者はCa^<2+>を結合すると、後者と結合してそのキナ-ゼ活性を抑制した。 この様式は、従来知られている脊椎動物平滑筋のミオシン軽鎖キナ-ゼとは全く様相を異にする。平滑筋ミオシン軽鎖キナ-ゼはカルモジュリンをCa^<2+>結合蛋白質としてもち、Ca^<2+>によりupーregulationをうけるものである。今後、2つのCa^<2+>結合蛋白質の構造と機能に検討を加えたい。
|