グルタミン酸神経伝達における内因性Zn^<++>の調節機構

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454136
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 馬場 明道 大阪大学, 薬学部, 助教授 (70107100)
• 研究分担者: 岩田 平太郎 大阪大学, 薬学部, 教授 (30028823) ; 小山 豊 大阪大学, 薬学部, 助手 (00215435) ; 松田 敏夫 大阪大学, 薬学部, 助手 (00107103)
• キーワード: 亜鉛イオン / グルタミン酸 / NMDA受容体 / プロテインキナ-ゼC / 海馬

研究概要

1.海馬Zn^<++>結合蛋白質の解析:海馬上清にはmetalloenzymeとは異なるZn^<++>結合蛋白が存在すること、更に、その蛋白からのZn^<++>の解離を生理的濃度のグルタミン酸が立体特異的に促進することを見いだした。一方、Zn^<++>キレタ-のdithizoneの慢性投与により海馬のZn^<++>レベルを特異的に低下させるin vivoの系を確立した。このラットにおいて海馬の神経伝達物質の内グルタミン酸のみが有意に低下することを見いだした。
2.Proteine Kinase C(PKC)の細胞内移動:海馬synaptoneurosomeにおいてNMDA,グルタミン酸がPKCの細胞質から膜への移動を引き起こすこと、この作用はNMDA受容体を介するCa++流入により起こること、Zn^<++>キレ-タ-を用いた検討から、このCa++依存性のPKCの細胞内移動には微量の細胞内Zn++が必須であることを明らかにした。更に、このNMDA作用の発育との関連を検討したが、生後1週目においてその作用が顕著であった。又、この場合においても、内因性Zn++が必須であることを明らかにした。
3.Zn^<++>によるグルタミン酸遊離・NMDA受容体の調節:海馬においてZn^<++>が特異的にグルタミン酸の遊離を抑制し、一方、dithizoneは逆に促進することを明らかにした。その作用機序はCa++非依性のものであることを明らかにした。
4.NMDA受容体によるPI代謝回転の抑制機序:カルバコ-ルの促進作用に対するNMDAの抑制制用がZn++により消失すること、この作用は内因性Zn++の関与を示すものでなくCa++流入の阻害であった。
5.初代培養神経細胞:グルタミン酸によるastrocyteのswellingを見いだした。

研究成果

• [文献書誌] T.Kihara,A.Baba,Y.Koyama,T.Ishihara & H.Iwata: "Inhibition of[3H]glutamate release by Zn^<++>in rat hippocampal slices" J.PharmacobioーDyn.13. 321-326 (1990)
• [文献書誌] T.Kihara,T.Ishihara,A.Baba & H.Iwata: "Effect of dephenylthiocarbazone(dithizone)on glutamate level in hippocampus preparation in vitro and in vivo" J.PharmacobioーDyn.13. 225-230 (1990)
• [文献書誌] Y.Koyama,T.Sugimoto,Y.Shigenaga,A.Baba & H.Iwata: "A morphological study on glutamateーinduced swelling of cultured astrocytes:Involvement of calcium and chloride ion mechanisms" Neurosci.Lett.122. (1991)
• [文献書誌] Y.Koyama,A.Baba & H.Iwata: "lーGlutamateーinduced swelling of cultured astrocytes is dependent on extracellular Ca" Neurosci.Lett.122. 210-212 (1991)
• [文献書誌] S.Etoh,A.Baba & H.Iwata: "NMDA induces protein kinase C translocation in hippocampal slices of immature rat brains" Neurosci.Lett.122. (1990)
• [文献書誌] A.Baba,S.Etoh & H.Iwata: "Inhibition of NMDAーinduced protein Kinase C translocation by a Zn chelator:Implication of intracellular Zn" Brain Res.(1991)