研究概要 |
イオンチャネルの発生成熟段階に、どのような因子が関与するかを検討する為に、ラット胎児心筋細胞を同種成熟ラットの腎被膜下に移植し、移植心筋の活動電位の発達段階の電気生理学的な特性について通常微細電極法を用いて、正常発達心筋細胞の活動電位との比較検討を行った。さらに、交感神経再支配との関係について解析を行った。 移植後1〜4週間目までの初期では、移植心筋細胞の活動電位の持続時間は成熟ラット心筋の活動電位より延長していた。移植後2〜4週間で、活動電位持続時間は、次第に短縮し、4〜6週間後には成熟心筋細胞の活動電位と同じ形態を示すようになった。この時期に一致して、腎被膜下心筋組織には交感神経系の神経の再神経支配が観察された。 以上の結果は、心筋細胞の発達段階において活動電位の持続時間を短縮させる因子として重要な役割をもつKチャネルの発現が関与していることを示唆しており、神経支配とイオンチャネル形成との間に連関があることを示すものである。 また、本研究中、我々は、協同研究者の西川ら(Nature,1991)によって開発されたプロトオンコジーンc-kitが発現する受容体型チロシンキナーゼのモノクロナール抗体(ACK-2)を投与されたマウスで、腸管自動能に異常があることを発見し、この抗体(ACK-2)処置マウス小腸では、平滑筋細胞群、壁在神経細胞群には異常はなく、ある特殊な細胞(c-kit(+))が欠落しており、この細胞が腸管の規則正しいリズム発生起源となる重要な役割を演じている事を見いだした(Development,1992)。さらに、このペース メーカー機能を担う細胞の培養に成功し、電気生理学的にペースメーカー細胞であることを証した。 現在、心筋および各種平滑筋で構成される臓器におけるペースメーカー機構の発達について研究を展開しているところである。
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