研究概要 |
本研究は昨年度に引き続き,モルモット大動脈またはモルモット回腸縦走筋などの末梢組織を用いた実験,およびラットによる血圧実験からタキキニン・ペプチド(タキキニン類)の生理作用の多様性をタキニニン受容体サブタイプと対応させて検討した。 1.細胞内情報伝達系:動脈血管と同様にサブスタンスP感受性を持つモルモット腸管縦走筋を用い,サブスタンスPカルバコ-ルによりイノシト-ルリン脂質代謝と収縮との関係を比較し,NKー1およびムスカリン性の各受容体による細胞内情報伝達系の差異を明らかにした(J.PharmacobioーDyn.,1991). NKー1受容体と遊離SH基の存在:モルモット大動脈に活性化SH基含有サブスタンスPを作用させると,サブスタンスPの弛緩反応が抑制された。この成績からNKー1型受容体も,例えばオピオイド受容体と同様に,受容体上に遊離SH基が存在し,サブスタンスPとの結合に関与していることを示した(投稿準備中). 末梢組織を用いた上記1と2の実験,およびすでに報告した血管内皮細胞の成績を踏まえて,中枢の血圧調節部位におけるタキキニン受容体の性質を調べた。 3.血圧作用:NKー1受容体の選択的拮抗薬のCPー96,345を用い,種々タキキニン類による昇圧作用に対するCPー96,345の効果を調べた。その結果,すでに我々が報告しているように,中枢にはNKー1とNKー3の各受容体が存在すること,この場合ニュ-ロキニンAのようなNKー2刺激薬はNKー1受容体に結合して昇圧に作用すること,さらに我々が調べたタキキニン類のうち最も昇圧作用の強いニュ-ロキニンγの昇圧効果はCPー96,345により完全には拮抗しないことを確かめた(Neurosci.Lett.,in press,1992)
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