研究概要 |
私達はこれまでタキキニン・ペプチドによる中枢性血圧調節機構について研究し,交感神経系を介する系と,下垂体からのバゾプレシン遊離による系との二つの作用機構が存在するという非常に興味深い結果を得た.一方,摘出血管では,タキキニン・ペプチドは内皮細胞から弛緩因子を遊離させ,血管を弛緩させることを明らかにした. 平成4年度は最終研究年度にあたるので,中枢や末梢におけるタキキニン・ペプチドの生理作用の多様性について,中枢と末梢の実験系を用い一連の研究をまとめた. 1.無麻酔・無拘束のラットに,NK-3型受容体選択的アナログであるセンクタイドを脳室内に投与すると,血中のバゾプレシン量が増加することを明らかにした. 2.センクタイドを視床下部の視索上核や室傍核に直接投与し,血圧の変化を調べた.その結果,センクタイドは室傍核のNK-3型受容体を刺激し,下垂体からバゾプレシンを遊離させて,血圧を上昇させることを明らかにした(Brain Research,1992). 3.NK-1受容体のアゴニストや,NK-1受容体の非ペプチド性アンタゴニスト用い,サブスタンスPによる中枢性血圧調節機構を明かにした(Neurosci.Lett.1992). 4.サブスタンスPによる回腸縦走筋の収縮作用およびイノシトール・リン脂質代謝との関係を,ホスホリパーゼC阻害剤のネオマイシンを使って検討した.サブスタンスPは回腸縦走筋を収縮すると共に,イノシトール・リン脂質代謝を促進した.ネオマイシンはサブスタンスPによるイノシトールリン酸生成をほぼ完全に阻害したが,一過性の収縮は一部のみ抑制した.これらの成績からサブスタンスPによる初期の一過性収縮に関与するCa動員系は,イノシトール・リン脂質代謝系と共に別のCa動員系が考えられる(J.Pharmacobio-Dyn,1991).
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