遺伝子工学の手法を利用してPRPP合成酵素の性質をしらべる一方、細胞レベルで制御因子の変動の解析を行った。<1.ラットPRPP合成酵素IおよびII cDNAの大腸菌における発現と各型酵素の精製と性質の検討>___ー.cDNAクロ-ニングにより発見された二つのアイソフォ-ムは相同性高く通常の方法では分離しえない。しかも組織により量の相対比が異なるのでまず各々の性格づけが必須である。発現ベクタ-pKK233ー2を改変して使用し、各サブユニットを大腸菌内で発現させ、簡便な精製法で大量の純品を得ることに成功した。10リットルの培養液から得られた酵素量は、ラット約500匹の肝臓から得られたものに相当した。両サブユニットの諸性質をしらべたところ、ヌクレオチドによる阻害、硫酸イオンに対する応答、熱安定性に著しい差があることが明らかとなった。<2.増殖刺激後のSwiss3T3細胞におけるMg^<2+>動態の検討>___ー.細胞内遊離Mg^<2+>濃度の測定は、まだ方法として確立していない。そこでまず、蛍光色素magーfuraー2をアセトキシメチル体として負荷し、顕微鏡画像解析法を用いることにより、細胞内遊離Mg^<2+>濃度を単一細胞レベルで測定する方法を確立した。magーfuraー2の細胞での顕著な局在化は観察されず、未加水分解物の測定への干渉もほとんどなかった。しかし、37℃1時間で30ー50%のmagーfuraー2が細胞外に漏出し、30分以上の連続測定は困難であった。また、一部の蛋白の共存下ではMg^<2+>の指示濃度の低下がみられた。以上の問題点をふまえた上で測定を行ったところ、ボンベシン+インスリンあるいはEGF+インスリン刺激後1時間以内に細胞内遊離Mg^<2+>濃度が有意に上昇した。<3.増殖刺激によるヌクレオチド合成亢進を修飾する他アゴニストなどの検討>___ー.cAMPが合成亢進に抑制的に作用した。他のアゴニスト、細菌毒素、阻害因子の合成への効果もしらべる計画である。
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