ロイコトリエンやPAFはいずれも脂質性のメディエターであり、生理活性脂質と総称されている。これらの物質は炎症や免疫反応の重要なメディエーターと考えられている。本研究ではこれら生理活性脂質の代謝と受容体、さらに細胞内の情報伝達につき研究を進め、以下の結果を得た。 1.PAF受容体の単離と細胞内情報伝達経路の解明 アフリカツメガエル卵母細胞での発現クローニングメにより、PAF受容体cDNAを単離し、その構造を解析した。さらに、受容体を大量に発現させた細胞を作製し、細胞内情報伝達の仕組を解明した。この結果、PAF受容体はアミノ酸342個からなる7回膜貫通型受容体で、種々のG蛋白質を介して、ホスホリパーゼC、A2、MAPキナーゼを活性化し、さらにアデニル酸シクラーゼを阻害することがわかった。 2.ロイコトリエン受容体の研究 ロイコトリエンB4、D4の受容体をモルモット白血球、肺の細胞膜画分より可溶化し、精製した。この結果、いずれの受容体も百日咳毒素に感受性のおそらくGi蛋白に共役していると思われた。実際、白血球やモルモット気管平滑筋のロイコトリエンによる反応は百日咳処理で消失した。ロイコトリエン受容体の発現クローニングは現在のところ成功していない。 3.ロイコトリエン生合成酵素の研究 ロイコトリエンB4を生成するロイコトリエンA1水解酵素の研究を進め、本酵素が亜鉛を含むメタロプロテアーゼの一種であるという予想外の事実を突き止めた。単一の酵素がペプチドと脂肪酸という全く別の物質に働き、水分子を添加するメカニズムについて研究を進め、酵素の亜鉛結合部位、さらに基質の結合部位を解析した。
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