研究概要 |
研究は予定されたとお進行しており,ヒトHー<ras>___ー癌遺伝子のよりトランスフォ-ムしたNIH3T3細胞中で人為的に高度に発現させる事により細胞を正常に近い状態に戻す(reversion)cDNAを,PCR(ポリメラ-ゼ連鎖反応)法を用いて増幅し一部のものをすでにクロ-ン化した。クロ-ン化したcDNAを、もとの過剰発現ベクタ-に入れ,Hー<ras>___ーでトランスフォ-ムしたNIH3T3細胞に再び導入したところ,得られたcDNAのうち幾つかのものは比較的高頻度(20〜30%)の細胞にreversionをひき起こす事が判明した。 現在,回収された多数(〜30個)のcDNAについて,構造の解析およびクロ-ン化して得られたrevertantについての形態以外の癌化に伴う形質の有無を解析中である。回収されたcDNAのうちの1つ(Rev6ー4と命名)では、クロ-ン化したcDNAの過剰発現により高頻度(〜30%)にreversionが起こり、得られたrevertant細胞は軟寒天中コロニ-形成能,ヌ-ドマウス腫瘍形成能を喪失している事がわかり、すでに全構造1914塩基対を決定した結果,細胞増殖期特異的に発現されるATPー依存性RNA helicase活性をもつ核蛋白質p68をコ-ドするcDNAがアンチセンスの向きに入っている事が判明した。すなわち,p68の発現をアンチセンスmRNAの過剰産生で抑えている事が,<ras>___ー癌遺伝子によるトランスフォ-メイションを抑制する事が示唆され,実際mRNA量のNorthern blotによる解析よりRev6ー4ではp68のmRNA量が低下している事が示された。さらに我々は,p68をコ-ドする完全なcDNAを得て現在p68cDNAをセンス向きに過剰発現させると細胞にどのような変化が起こるかを解析中である。次年度においては,p68の機能の<ras>___ー癌遺伝子との関連,他の癌遺伝子でトランスフォ-ムした細胞へのp68抑制の影響を解析するとともに,得られた他のcDNAの構造解析を進めてゆく予定である。
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