(1)ヒトーras癌遺伝子によってトランスフォ-ムしたNIH3T3細胞を正常復帰させるcDNAクロ-ンの一つRev6ー4の解析を行った。Rev6ー4はRNAhelicase活性をもつ核蛋白p68をコ-ドするcDNAがアンチセンスの向きの発現されていたので(平成2年度報告書参照)、PCRによって単離されたRev6ー4遺伝子を再びアンチセンスの向きに発現ベクタ-に組み込み、ヒトHーras癌遺伝子でトランスフォ-ムしたNIH3T3細胞に導入して得られた二次正常復帰細胞についてその性質を解析した。これらの細胞は親株に比べて軟寒天中でのコロニ-形成率が低く(親株の約25分の1)、ヌ-ドマウスでの腫瘍形成速度も遅い。プレ-トに生やした時の最終的な細胞密度は親株の3分の1から4分の1であったことから、p68のアンチセンスmRNAに産生によってras癌遺伝子によるトランスフォ-メイションが部分的に抑制されることが確かめられた。 (2)p68のfullーlengthのcDNAを単離し、これをセンスの向きに発現ベクタ-に組み込み、正常なNIH3T3に導入したところ、形態的にトランスフォ-ム形とよく似た細胞株が得られた。しかし、このクロ-ンは軟寒天中でコロニ-を形成せずヌ-ドマウスに腫瘍を形成しなかった。このクロ-ンでのp68蛋白の合成を調べるためにp68をコ-ドするcDNAを大腸菌蛋白との融合蛋白として発現させ、精製してウサギに免疫し、抗p68抗体を得た。この抗体を用いてウエスタン法で解析した結果このクロ-ンはp68の産生において正常な3T3細胞と差が無いという結果が得られた。現在、p68の生理的機能を解析中である。 (3)Rev6ー4以外に、正常復帰をおこす可能性をもつ2種類のcDNAを単離したので、その構造と性質を解析中である。
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