研究概要 |
免疫応答過程での蛋白リン酸化の意義を解明するため,蛋白脱リン酸化を解媒するプロテインホスファタ-ゼに着目し,その3分子種PP1,PP2A,PP2Cの微量分別定量法を確定し,これを用いて脾・胸線・リンパ節・肝など免疫担当臓器の酵素活性を測定した.次いで免疫担当細胞内シグナル伝達に障害がある自己免疫疾患モデルマウスMRL/1prの活性と比較検討した.まず分別定量法の至適条件の検討により,粗抽出液では,PP1とPP2Aはともにほとんど不活性であったが,希釈により比活性の上昇が認められ,1000倍以上の希釈によりほぼ一定値に達することがわかった.またPP1は粗抽出液では容易に失活するが,Ca^<2+>ートリプシン処理により活性が回復する.PP2Aはエタノ-ル処理前後で測定した.その結果,PP1の活性は正常では脾が最も高値を示し,lprでは肝と脾で有意の上昇がみられた.Ca^<2+>ートリプシン処理により,正常では約2倍の活性化を示したが,これに対し,lprリンパ節では約5倍の活性化がみられ,PP1はlprでは酵素量の上昇を示すがそのほとんどが不活性な状態にあることが示唆された.PP2Aは,各正常臓器で同レベルの活性値が得られたが,lprでは脾とリンパ節エタノ-ル処理後の活性が明らかに上昇していた.PP2Cは,脾で胸腺の2倍の活性が認められた.本酵素の残るひとつの分子種PP2Bについては,内因性Ca^<2+>依存性プロテア-ゼなどのため,粗抽出液での測定法がいまだ確立されていない.われわれはこの点についても検討を加え,ペプチド性インヒビタ-1を基質として用いることによりほぼ安定に測定できる条件を見いだした.現在粗抽出液での活性測定を進めている.以上により,プロテインホスファタ-ゼの免疫担当臓器での活性を正常と病態で比較し,病態変異を明らかにしたので,さらに遺伝子レベルからの解析をノザンブロットで進めている.
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