研究概要 |
脳のセロトニン(5ーHT)ニュ-ロンは,脳幹より脳の殆んど全領域に投財する「大放散京」として,各向所で多様な分子種の受容体を介しそれぞれ固有の調節を行い,それ等が集合し,高次機能のト-ンを調整する,という「広域高次調節京」と考えられているが,本研究の目的は,この5ーHT系活性自身の「全体同調」の存否と意義,動的な「向所調節」の実体の解明であり,これは労極的には「脳全体」機能の組織化・階層構造についての新しい視点を供するものである。このため,我々はラットを用い,この5ーHT系の活性を全体に,迅速・特異的・可逆的に擾乱又は,停止せしめ,それに対する,脳向所の代謝応答・過渡特性そして脳の生理応答を調べ,此等を,本来の5ーHT系の役割の「逆ベクトル」として把えるという,広汎なアプロ-チを,擾乱にはトリプトファン側鎖酸化酵素の生体投与,そして応答のモニタ-には,in vivoマイクロダイアリンス等,そして脳波・行動・脳温解析,により確立し,一歩一歩着実に研究を進めて来た。本年度は,特に,脳向所で,多階層の5ーHT回転のリズムを,実験技術の改良により,見出し,それぞれの特異的消去の試みを行い,部分的成功をおさめた。この事は,5ーHTの多彩な,しかし,最終的にはコ-ヒ-レントな役割を,代謝動態と生理との対応で,把える第一歩である。代謝リズムの全体・向所問題へのアプロ-チとして本年は,向所脳温連続測定を脳波測定に加え,各所に,周期・応答性の異る律動を欠出し,沢在,その本態と他の活性との相互連関の問題を追求している。5ーHTニュ-ロンの稠密な分布が明らかな大脳皮質へのアプロ-チの第一歩に着手し,線状体・視床における5ーHT系の応答性と異る性質を,まづ,テトラハイドロバイオプテリン向所潅流に対する回転促進の欠除という形で,明らかにし,また,グルタミン酸等アミノ酸の回転に対する間接効果が5ーHTに存在する可能性を指摘した。
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