研究課題
脳腱黄色腫(CTX)は小脳・腱などにコレスタノ-ルが蓄積する先天性代謝異常症である。血清コレスタノ-ルの定量による診断法は確立したものの,異常代謝の本態はわかっていない。そこで、CTXのモデル疾患動物をつくることによって臨床症状発現の機構とそれに基づいた治療法の確立を目指したのが今回の研究である。マウスに1%コレスタノ-ル含有食を投与したところ、血清中のコレスタノ-ル濃度は対象群の30〜40倍に上昇し、8カ月後に20%の頻度で目の角膜の病変が出現した。角膜のコレスタノ-ル濃度も血清と同様に上昇しコレスタノ-ルの沈着を示唆している。病変部の角膜を電子顕微鏡により組織学的に解析すると、上皮基底膜と実質表層部との間に結晶の析出が見られる。X線マイクロアナライザ-で分析すると、カルシウムとリンの存在が示され、リン酸カルシウムの沈着があることがわかった。カルシウムのKα線の分析もカルシウムの局所的沈着を裏付けている。結晶そのものの分析はなされていないが、病変角膜全体としてのコレスタノ-ルの濃度上昇を考えると、この部分にはコレスタノ-ルの結晶が析出して、その周辺をリン酸カルシウムの膜が包んでいるということが推定される。CTX患者では血中コレスタノ-ルの濃度上昇が長期にわたって存在し、小脳やアキレス腱など特定の組織にコレスタノ-ルが選択的に蓄積して臨床症状をあらわすが、我々はマウスに高コレスタノ-ル食を経口投与することによって既に小脳症状を作り出すことに成功している。今回の実験によってコレスタノ-ルの異常蓄積にともなった角膜病変をもたらすことが出来たことは、今後臨床症状の発現機構を解明する上で、有効なモデルになるものと期待される。
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