研究概要 |
研究者はこれまで液性因子によるニュ-ロン・グリア相関の研究を進めるなかで、ヒトグリア性細胞が神経芽細胞の増殖と分化を促進する新しい神経発育因子(NGPF)を産生していることを見いだした。 NGPFはフォンレックリングハウゼン氏病患者より得られた神経線維腫組織中に存在し、ヒト神経芽腫細胞(GOTO,TGW,NAGAI)に対し強いDNA合成を促進する活性を持つ。この因子は神経線維腫の抽出液より、熱(100℃、10分間)および酸(pH2.3)処理後、ゲル濾過(BioーGel Pー10、pH2.3)、逆相分取用カラム(LOPーODS)、陰イオン交換カラム(MonoーQ)、逆相系カラム(ODS)にかけ精製した。NGPFは熱・酸安定性の分子量4、400のペプチトで神経芽腫細胞に対し細胞増殖促進効果を示し、数nMでGOTO細胞のDNA合成を約4倍に増強する。また正常ラット大脳神経細胞の神経突起伸長を促すが、ラット褐色細胞腫(PC12)には無効であった。化学構造的には、アミノ末端はブロックされているだけでなくペプチド鎖に直接他の化合物が結合している。現在、FABーMASやNMRを用いてNGPFの全構造を解析中である。 mRNAを直接カエルの卵に刺入して、NGPFcDNAをクロ-ニングする操作を行ったが、二次クロ-ニングの段階で活性は同定出来なくなり、最初に得られたmRNAの自然分解のためと結論された。手術より得られる神経線維腫は、量的にも限りがあり、mRNAの調整法を腫瘍塊ではなく培養神経線維腫細胞(ただし、これは坐骨神経周囲からの腫瘍ではなく、皮膚の腫瘍より樹立したもの)を用いて再度おこなう。
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