研究者は、神経線維腫中に存在する神経芽腫細胞増殖因子(NBGF)は、ウリジンあるいはアデノシン誘導体であることを証明した(論文投稿中)。本年度はこの因子とは別に、グリアの増殖を抑制するタンパク質性因子(グリア細胞増殖抑制因子:GGIF)が存在することを新たに見いだし、この因子を5種類のカラムクロマトグラフィ-を用いて完全精製した。さらに、この因子にニュ-ロンの再生機能を促進する新しい神経栄養因子(NTF)活性があることを見いだした。この因子はグリア細胞の増殖をサイトスタチックに抑制することから、われわれはこの因子をグリオスタチンと命名した。 1、研究材料と方法:グリア細胞増殖抑制活性は、培養ラットアストロサイト-マ細胞(C6)に、試料を添加し18時間に取り込まれる ^3Hチミジン量をDNA合成として測定した。精製法は、神経線維腫抽出液からブル-トヨパ-ル、DEAEセファセル、ブチルト-ヨ-パ-ル、ハイドロキシルアパタイト、MonoQカラムを用いた。NTF活性は、培養ラット大脳皮質ニュ-ロンの生存率と神経突起伸展を指標にNTF活性を測定した。 2、研究結果と考察:神経線維腫から5種類のカラムを用いて精製したグリオスタチンは、SDSーPAGE上では、分子量50kの単一バンドとして泳動された。グリオスタチングリアによって産生され、グリア自身に作用するいわゆるオ-トクリン形式で作用するユニ-クな因子である。さらに、大脳皮質ニュ-ロンの生存維持や神経突起伸展作用を併せもつことは、グリオスタチンの将来的な臨床応用(脳腫瘍、神経疾患の治療)を考える上で、重要な知見である。
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