研究課題
われわれは本年度中の次のような研究を行なった。昨年度に引き続きジストロフィンのジストロフィン結合タンパク質複合体との結合部位の検討を行なった。生体より精製した複合体を、SDS電気泳動した後、PVDF膜にプロットした後、融合タンパク質として作成したジストロフィンの断片を作用させた。それによって複合体の個々の構成成分がジストロフィンのどの部分と結合するかを明らかにした。その結果、糖タンパク質A3aはシスティンリッチドメインに結合するが、A2、A4は結合しないことが分かった。システィンリッチドメインは、ジストロフィンのアイソフォームであるユートロフィンと80%ものホモロジーがあることが知られている。従ってA3がユートロフィンに結合する可能性が考えられる。ドシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の免疫組織学検索を行なった。この際ジストロフィンは失われているが、ユートロフィンは正常と異なってはるかによく発現している。DMD時の複合体については、Campbellらによって殆ど消失すると報告されている。しかしわれわれの研究では、複合体は減少はしているが、かなり残っていた。このことは、複合体がユートロフィンと結合することによって残っている可能性を示している。われわれの所見は、Campbellらの所見と併せると、DMDの病態形成にはA2の減少が重要な役割を演じていること、ジストロフィンの矢失はユートロフィンによってある程度代行されることを示唆している。
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