研究課題
一般研究(B)
われわれはドシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の責任タンパク質であるジストロフィンとそれに結合する糖タンパンク質結合体の精製を行ない、それらの免疫抗体を作製し、生化学的な方法及び免疫組織学的な手法を用いてDMDの病態形成にそれらが関与することを明らかにした。われわれはウサギ骨格筋から精製ジストロフィンに糖タンパク質を含む数種のタンパク質が付いていることを明らかにし、その量比を確定した。ついでジストロフィンをカルパインで分解することによって、ジストロフィン分子のうち消化を受け易い部分を明らかにして、分子構造の概略を明らかにした。ジストロフィン結合タンパク質のうち糖タンパク質A2、A3、A4は一つの複合体を作っていることが報告され、糖タンパク質複合体と呼ばれている。われわれは、この複合体がジストロフィンのどの部位に結合しているかを決定した。結合部位はシスティンリッチドメインと、C端ドメインの前半部位であったが、この部位は以前から欠失するとDMDになることが分かっていた部位である。従ってジストロフィンと複合体の相互作用が失われることがDMDの病因として重要であることを明らかにした。他の研究室からの報告によればこの部位はジストロフィンのアイソフォームであるユートロフィンの相当部位に対して高いホモロジーを持っており、複合体が結合している。従ってユートロフィンの結合部位相当位置に複合体が結合している可能性は高い。さらにわれわれは免疫組織学的にDMD筋を調べ、ジストロフィンは失われるが、代わって量は少ないがユートロフィンが発現されること、A2、A3は減少するが、かなり残っていることを発見した。従ってわれわれの所見は、DMDではユートロフィンが発現されてジストロフィンの代行をするが、量的には不十分であり、機能的にも十分には代用できずに病状が進行することが考えられる。
すべて その他
すべて 文献書誌 (18件)