アルブミン遺伝子プロモ-タ-を結合した癌遺伝子による肝発癌

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454164
• 研究機関: 旭川医科大学
• 研究代表者: 小川 勝洋 旭川医科大学, 医学部, 教授 (50045514)
• 研究分担者: 西川 祐司 旭川医科大学, 医学部, 助手 (90208166)
• キーワード: アルブミンプロモ-タ- / 癌遺伝子 / Adenovirus E1A / 肝細胞

研究概要

本研究の目的は、ラットアルブミン遺伝子のプロモ-タ-領域をクロ-ニングして、癌遺伝子の上流に組み込み、これを肝細胞に導入することにより、肝細胞特異的に癌遺伝子を発現させる新しい肝発癌モデルを確立することである。
1.ラットgenomic DNAからアルブミンプロモ-タ-のcore elementsを含む470bpの領域を、両端にBam HI siteを持つprimerを用いてPCR法により増幅し、クロ-ニングした。次に、このDNA断片をadenovirus E1A遺伝子を含むpUCE1Aに組み込み、pA1bE1Aベクタ-を作製した。さらにこのベクタ-をF344ラット分離肝細胞に導入し、プロモ-タ-が肝細胞で作用するか否かを検討した。Transfection後24時間以内にmRNAを分離し、E1Aをプロ-ブとして、Northern hybridizationを行なったところ、E1AmRNAの発現が見られ、また、抗E1A抗体によるimmunoprecipitationにより、蛋白の発現が確かめられた。
2.正常ラット肝細胞をスフェロイド培養し、レトロウィルスベクタ-に組み込んだ外来遺伝子をトランスフェクトしたところ、高率にトランスフェクションが可能であった。また、この遺伝子導入肝細胞を同系ラットの脾内に移植し、生体内で外来遺伝子を発現できることが確認された。
3.C3Hマウスの不死化した正常肝細胞にpA1bE1Aを単独または他の癌遺伝子と組み合わせてトランスフェクトして、トランスフォ-マントを作製した。このトランスフォ-マントをC3Hに移植して、それらの腫瘍形成能を検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Sakai,H.and Ogawa,K.: "Mutational activation of Hーras and Kーras genes is absent in NーnitrosoーNーmethylureaーinduced liver tumors in rats." Jpn.J.Cancer. 81. 437-439 (1990)
• [文献書誌] Nishikawa,Y.,Sakai,H.,Inagaki,M.,Ogawa,K.and Nagase,S.: "Genotypic differentiation of intrahepatically transplanted hyperplastic nodule cells of analbuminemic and normal rat origin by polymerase chain reaction." Jpn.J.Cancer. 81. 711-714 (1990)
• [文献書誌] 小川 勝洋: "実験肝発癌" 肝疾患研究の進歩. 7. 145-157 (1991)
• [文献書誌] Sakai,H.and Ogawa,K.: "Mutational activation of cーHaーras gene in intraductal proliferations induced by NーnitrosoーNーmethylurea in rat mammary glands." Int.J.Cancer. 49. 140-144 (1991)
• [文献書誌] Inagaki,M.and Ogawa,K.: "High sensitivity of normal rat hepatocytes to retroviralーmediated gene transfer and their transplantation in the spleen of adult rats" Cell Struct.Funct.16. 283-288 (1991)
• [文献書誌] Ogawa,K,Ohta,T,Inagaki,M,and Nagase,S.: "Identification of F344 rat hepatocytes transplanted within the liver of congenic analbuminemic rats by the polymerase chain reaction."