研究概要 |
疾患発症の内因の一つであるHLA遺伝子群に着目して、インシュリン依存性糖尿病(IDDM)と白樺花粉症の発症に関与するHLAクラスII遺伝子とその産物を解析するとともに、MHCクラスII抗原の発現増強機構を解析した。 1.日本人IDDM患者由来の細胞及びIDDMと強い相関を有するHLAーDQw4ホモ接合体細胞から、DQw9及びDQw4に対応するゲノム遺伝子を分離し、その全塩基配列を決定した。又IDDM患者11名の遺伝子DNAを鋳型にして、PCR法でDQA,DQB及びDRB遺伝子の第2エクソン部分を増幅、分離し、全てのDQBと一部のDQA,DRBの塩基配列を決定した。その結果、患者のDQB塩基配列と健康人のIDDM感受性ハプロタイプのDQB塩基配列の間には、差異は認められなかった。そして検討した全ての例で、DQ抗原β鎖の57番目のアミノ酸は、白人ではIDDM抵抗性に属するアスパラギン酸であった。日本人IDDMの発症に関与するアミノ酸配列を特定するべく、さらにDQA,DRBについて解析している。 2.IDDMを含む自己免疫疾患では、標的細胞にクラスII分子の異所性の発現がみられ、その発症への関与が示唆されている。クラスII分子の発現増強の機構をB細胞を用いて検討した。ILー4はクラスII分子の発現を増強する。そしてHLAーDR分子は、CD23分子と密接して発現が増強した。更にILー4によるクラスII分子の発現増強には、細胞内Caイオンの移動が関与していることが明らかになった。 3.白樺花粉症の発症は、HLAーDQw9及びDR9と強い相関を有していた。これらのいずれが発症に関与しているかを明らかにするために、白樺抗原に対するT細胞増殖反応系を確立した。この反応は、抗DR抗体で阻止されたが、抗DQ抗原で阻止されなかった。この結果、患者T細胞の増殖にはDR分子が関与している可能性があり、さらにDR及びDQ遺伝子導入L細胞、トランスジェニックマウスを用いて解析を進めている。
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