研究概要 |
造血細胞の増殖分化は主として誘導因子、抑制因子によって制御されるが、抑制因子の研究特にfeedback機構としての抑制因子産生の研究は少ない。 我々はILー3刺激に反応してマウス骨髄細胞から抗ILー3活性(NILー3)が出されることを見い出し本研究を始めた。 NILー3は分子量数万の易熱タンパクであることが判明し、HPLCにより試料中のILー3と分離出来るところまで研究が進んでいる。現在試料の大量分離中であるが、ILー3を含まないNILー3画分によって、一部生理的研究は可能と思われる。骨髄細胞の密度勾配遠心法などによる分画から、NILー3は造血幹細胞画分から出されること、T細胞、B細胞、顆粒球、マクロファ-ジからは出されないことが分かった。さらに、増殖期幹細胞を殺す5ーFU処理によって得られたGo期幹細胞は本活性を出さないことから、NILー3は増殖期に入った幹細胞即ちやや分化の方向に進んだ幹細胞から出されるらしいことが示唆された。また、遺伝的に幹細胞を欠損しているw/w^vマウスから得られた幹細胞画分に相当する細胞群は本活性を産生しないことも判明したが、これも上記可能性を支持する結果であろう。現在Facsを用いて幹細胞の純化を行っている。 MLー3は過剰のILー3刺激に反応して骨髄細胞から産生されることからNegative feedback機構の一つと考えられるが、一方本研究進行中、適量のILー3刺激によって同じ幹細胞画分からILー6の産生が誘導されることを発見した。 ILー6はG,GMーCSFの活性増強作用を持つこと、またGo期の幹細胞を増殖期(ILー3反応性となる)に入れることが知られており、本年度の研究によりNILー3によるNegative feedbackとILー6産生誘導によるpositive feedbackの両機構が造血制御における重要なnetworkとして働いていることが明らかとなった。現在、後者に関連してILー3刺激によるGーCSF産生誘導の可能性を調べている。
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