ニュ-モシスチス・カリニの分子生物学と臨床応用に関する基礎的研究についての以下の研究成果を得た。 1.従来のヌ-ドラットを用いた感染系に加えて、ヌ-ドマウスを用いた感染・培養系を確立した。 2.ラット及びマウス・カリニ表面抗原に対する単クロ-ン抗体の確立と解析を行なった。その結果、ラット・カリニ主要表面抗原糖蛋白質(P115)の糖鎖部分が主要抗原となっていることを明らかにした。 3.P115蛋白質の部分配列を決定し、人工合成したペプチドに対する単クロ-ン抗体を作製した。これを用いて、カリニ表面抗原分析を行なった。 4.5Sリボゾ-ムDNAのPCR増幅法を用いたDNA診断法を開発し、臨床的に確立した。 5.ニュ-モシスチス・カリニのcDNAとゲノム・ライブラリ-を作製した。抗P115抗体を利用して、P115-cDNAクロ-ンを多数分離した。塩基配列分析の結果、表面抗原の構造に著しい多型性が観察された。 今後、P115遺伝子のcDNAとゲノムDNAの全構造を明らかにし、本研究で示唆された表面抗原の可変性の分子機構および分子病理に関して解析を行なう。特に、抗原変換とAIDSとの関連を明らかにする。さらに、ワクチン化研究を推進する。
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