細胞内寄生菌による細胞性免疫誘導に共通して不可欠な因子の解析と感染防御への応用

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454176
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 光山 正雄 新潟大学, 医学部, 教授 (10117260)
• 研究分担者: 河村 伊久雄 新潟大学, 医学部, 助手 (20214695)
• キーワード: 細胞内寄生菌 / 感染抵抗性 / T細胞 / 遅延型過敏反応 / マクロファ-ジ / インタ-フェロンーγ / インタ-ロイキンー1

研究概要

細胞内寄生菌に共通した特徴である、感染宿主に細胞性免疫を誘導する性格には、菌種を越えた普遍的な機序があるものと考えられる。本研究では、リステリア、サルモネラ、BCGなどマウスにおける細胞内寄生菌を用いてこの点を解明しようと試み、当研究年度に以下のような知見を得た。1.リステリア菌体を培養マクロファ-ジに作用させると、マクロファ-ジ内増殖能を有する菌株生菌のみが強いインタ-ロイキン1(ILー1)産生を促し、死菌や細胞内増殖能の無い菌株生菌にはこれがみられないことがILー1mRNA発現で判明した。2.同様の結果は、サルモネラとBCGの生・死菌でも確認され、マクロファ-ジ内増殖と、細胞性免疫誘導の初期段階に重要なILー1産生の間に普遍的な関係があると思われた。3.リステリアに関しては、細胞内寄生を可能にする上で重視されているリステリオリシン(58Kd)が直接ILー1産生を促していることが、精製リステリオリシンを用いて明らかとなった。4.各菌種による免疫でマウスに誘導される抗原特異的T細胞には、遅延型過敏反応のみを発現するものと、感染防御能を示すものの2種があり、何れもCD4+であり多くのサイトカイン産生能は同一であるが、後者のみがインタフェロンγ(IFNーγ)産生能を特徴とすることが、mRNA発現およびELISPOT Assayから明らかとなった。5.感染防御免疫を担うT細胞と遅延型過敏反応のみを担うT細胞の違いは、熱ショック蛋白などの、認識する抗原の違いに依存するものではなく、T細胞の分化段階の違いによることが示唆された。6.リコンビナントILー1をの用いることで、死菌による免疫でも抗原特異的にILー2・ILー3・MCFなどを産生し遅延型過敏反応を発現するT細胞の誘導は可能であったが、IFNーγ産生性のT細胞へ分化を促進させることはできなかった。

研究成果

• [文献書誌] Ikuo Kawamura,Masao Mitsuyama & Kikuo Nomoto: "Enhanced protection of cyclophosphamideーtreated mice against infection with Pseudomonas aeruginosa after treatment with Zー100,a polysaccharideーrich extract of Mycobacterium tuberculosis Aoyama B." Immunopharmacology and Immunotoxicology. 12. 331-343 (1990)
• [文献書誌] Masao Mitsuyama,Kenーichi Igarashi,Ikuo Kawamura,et al.: "Difference in the induction of macrophage interleukinー1 production between viable and killed cells of Listeria monocytogenes." Infection and Immunity. 58. 1254-1260 (1990)
• [文献書誌] Kenーichi Igarashi,Masao Mitsuyama,Katsumi Muramori,Hiroki Tsukada,Kikuo Nomoto: "Interleukinー1ーinduced promotion of Tーcell differentiation in mice immunized with killed Listeria monocytogenes." Infection and Immunity. 58. 3973-3979 (1990)
• [文献書誌] Katsumi Muramori,Masao Mitsuyama,Toshiya Handa,Bazir Serushago,et al.: "A dissociated induction of MCFーproducing and MAFーproducing T cells specific for Listeria monocytogenes in the in vitro primary culture system." Immunology. 72. (1991)
• [文献書誌] Kokichi Goto,Masao Mitsuyama,Sadao Imaizumi,Ikuo Kawamura & Ikuya Yano: "Mycolic acidーcontaining glycolipid as a possible virulence factor of Rhodococcus equi for mice." Microbiology and Immunology. 35. (1991)
• [文献書誌] Hiroki Tsukada,Ikuo Kawamura,Takao Fujimura,Kenーichi Igarashi & M.Mitsuyama: "Induction of macrophage interleukinー1 production by Listeria monocytogenes hemolysin." Infection and Immunity. (1991)
• [文献書誌] 光山 正雄(分担): "シンプル微生物学" 南江堂, 314 (1990)