研究概要 |
組織細胞は細菌の非特異的侵襲を阻止する各種の細胞表層構造物を保有しているが,細菌はこれらの障壁を特異的なリガンド-レセプタ-相互作用により突破して定着を成し遂げる。本研究課題では,細菌の宿主細胞への付着・定着過程を細菌側のリガンド(線毛)宿主側のレセプタ-の両面から解析を加える事を目的として研究を遂行してきた。本年度は,単一のタイプ1線毛レセプタ-糖鎖を含有するリポソ-ムまたはラテックスを用いて,タイプ線毛の認識する最適レセプタ-構造に解析を加えた。その結果,ダイマンノ-ス構造が良好なレセプタ-となる事が明らかになると共に,Man(1ー2)Manの認識において疎水基を有するpNPーManに対する親和性で2群に,Man(1ー3)Manの認識においてはマンノ-スに対する親和性で2群に分類された。この事は,タイプ1線毛リガンドが少なくとも4種存在する事が明らかになった。また,Man(1ー3)Manの認識においては,大腸菌の分離疾患間でもタイプ1線毛リガンドの差が認められた。一方,宿主細胞,特に正常マウス膀胱に注入されたタイプ1線毛保有大腸菌は,レセプタ-糖鎖が膀胱上皮最外層の細胞に存在するにもかかわらず菌の付着を起こさなかった。しかし,この最外層の細胞をトリプシン処理により除去する事により,タイプ1線毛保有大腸菌の膀胱付着・定着が成立し,膀胱災の発症が明らかになった。このマウス膀胱災モデルを用いた解析から,膀胱上皮最外層の細胞には付着抵抗性を示す機構の存在が明らかになった。
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