パラインフルエンザウイルスの細胞融合には膜融合蛋白質(F)と赤血球凝集・ニュ-ラミニデ-ス蛋白質(HN)の両者が必要であり、全長572アミノ酸のHNの539番目のアミノ酸の種類により細胞融合の程度が著しく異る。そこでHNの539番目近傍のアミノ酸配列を持つ合成ペプチド(16アミノ酸)を作り、これに対する抗体を作製した。しかしこの抗体はHNとは結合せず、HNの示す赤血球凝集活性(HA)もニュ-ラミニデ-ス活性(NA)も全く阻害しなかった。他方、529番目以降のアミノ酸を欠損させたHNを組換えワクチニアで発現させると、このHNは抗HN血清で弱く免疫沈降するもののHAもNAも全く欠いていた。以上の事は539番目近傍のアミノ酸配列がひとつの機能ドメインを形成するのでなく、HNの立体構造形成上で重要であることを示している。HNの立体構造の解明が重要である。 パラインフルエンザウイルスのRNAポリメレ-スはL遺伝子とP遺伝子の産物で構成されている。このウイルス群のHVJのLとP遺伝子にひき続き、牛パラインフルエンザ3型ウイルス(BPIV3)のLとPも組換えワクチニアで発現させた。このBPIV3のLとPは、BPIV3のヌクレオカプシド(RNP)を導入した細胞からウイルスを回収させ得るのみでなく、BPIV3ときわめて近縁なヒトパラインフルエンザ3型ウイルス(HPIV3)のRNPからもウイルスを回収させ得た。しかしHVJとBPIV3では全体として60%近いゲノムの相同性があるにもかかわらず、RNPからのウイルス回収において両ウイルス間でLとPの互換性が認められなかった。従って両ウイルスのLとPにおいて塩基配列の違いの大きなところがウイルス特異性を規定しているはずであり、その検証を始めたい。
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