狂犬病ウイルス街上毒感染マウスに認められる細胞性免疫抑制機序について、これまで以下の3点が示唆されている。(1)直接ウイルスがマウスのリンパ球やマクロファ-ジで増殖するためではない。(2)ConAに対する脾細胞の反応増殖性の低下と平行して、ILー2産生が著明に抑制される。(3)性状について引き続き検討中であるが、ILー2産生を抑制するインヒビタ-様物質が血清とT細胞画分の培養上清に認められる。本年度は以下のような成績が得られた。 (A)細胞性免疫低下に関わるILー2インヒビタ-様物質以外の因子の検討。 (1)ウイルス感染経過と共に、脾細胞総数は著明(約1/100)に減少するが、CD4^+、CD8^+細胞の占める割合は、経過と共に正常値の2〜3倍に上昇する。 (2)マクロファ-ジからのILー1産生、及びPGE_2の産生異常は認められなかった。 (3)ConA刺激に対するCD4^+、CD8^+細胞におけるILー2リセプタ-発現が感染後6日目以降、著明に抑制されていた。 (4)脾細胞培養上清に、ILー2活性を中和する物質の産生は認められなかった。 これ迄の成績と今回の成績を総合して、感染マウスにみられるILー2産生の低下は、T細胞そのものが何らかの原因でILー2産生能欠損の状態になって起こっていることが示唆された。 (B)ウイルス感染マウスにrーILー2(20万単位)を、感染後投与すると、細胞性免疫能の増強が見られ著明に生残率が上昇することが判明した。 (C)ILー2インヒビタ-様物質の分離とその性状については、引き続き検討を加えている。
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