研究課題/領域番号 |
02454184
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研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
武田 直和 国立予防衛生研究所, ウイルス中央検査部, 主任研究官 (90132894)
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研究分担者 |
山崎 修道 国立予防衛生研究所, ウイルス中央検査部, 部長 (20072902)
宮村 紀久子 国立予防衛生研究所, ウイルス中央検査部, 室長 (40072897)
谷村 雅子 国立小児病院, 小児生態部, 研究員 (90014191)
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キーワード | ピコルナウイルス / エンテロウイルス70 / 分子進化 / 分子系統樹 / 塩基配列 / 塩基置換 |
研究概要 |
RNAウイルスの遺伝子は一般のDNA遺伝子に比べて約100万倍の高速で進化する。この高い進化速度はヒトに病原性をもつ新しいウイルスの誕生と消失と密接にかかわっていると考えられる。エンテロウイルス70(EV70)分離株RNA遺伝子の解析から、ある時期に分子進化系統樹上から消失する系統は流行株として存続する系統と比較して、消失以前に特にレセプタ-結合領域を形成していると思われるアミノ酸部位に変異が蓄積することを示唆する結果を得た。本研究ではウイルスの分子進化系統樹上の存続と断絶を分離株のレセプタ-結合領域の分子変異の面から追跡し、その変異パタ-ンから推定される人工的変異ウイルスを作製して細胞上のレセプタ-との相互関係を分子レベルで解明することにより、ウイルスの誕上と消失について理論的基盤を確立することを目的とした。約10年間に世界各国から集められたEV70分離株約20株のゲノムRNAについてVP1の塩基配列を解読し、詳細な分子系統樹を作成した。各分離株の系統関係とこれに伴う塩基置換及びアミノ酸変異パタ-ンの解析を行い、原型ウイルスが持っていたであろう塩基配列を推定した。分離株の塩基置換パタ-ンを分子系統樹上に重ね合わせることにより、各分離株がどのような塩基変異を伴って分岐してきたかを明確に示すことができた。10年間の短期間にもかかわらず、系統樹の異なる技上で同一塩基座位において同一方向への塩基置換及びアミノ酸変異が多くみられ、塩基の同義置換の90%はトランジション型であった。また最近まで存続した分離株では同義置換の割にはアミノ酸変異が極めて少ないことも明らかとなった。EV70は霊長類由来細胞以外の細胞でも増殖しうるので、馴化ウイルスの塩基配列もレセプタ-結合領域のアミノ酸配列を同定する上で有用な情報を提供するものと考えられ、今後の実験に組込む予定である。
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