研究概要 |
(1)ヒト補体第3成分(C3)欠損患者からの末梢白血球から分離したポリA(+)RNAをノザンブロット法,PCRによって分析した結果、C3前駆体に対応するmRNAは検出されなかった。C3欠損症のあるものが、転写〜翻訳以前のレベルでの遺伝子発現異常であることが明らかとなった。 (2)補体調節蛋白HRFー20は、種々の白血病患者の血液細胞に発現されず、発作性夜間血色素尿症などの病因となっている。HRFー20遺伝子の調節機構を明らかにする目的で、ヒト遺伝子ライブラリ-からHRFー20遺伝子の分離を試みた。得られた最長クロ-ンは約8.5kbで、5'末端と3'末端を欠いていた。これまでの成績からHRFー20遺伝子は10kb以上のサイズを持つものと考えられる。 (3)マウス補体第4成分(C4)は、Hー2の第3領域(S領域)によって支配され、S^kのマウス系統ではC4産生の著しい低下がみられる。これまでの研究によって、S^kマウスの低産生は、肝臓におけるC4前駆体mRNAの低い恒常状態によるものであり、転写以降の段階に起因することを明らかにした。本年度の研究によって、さらに、preーmRNAのプロセシングの異常によるものであることを証明した。C4低産生系マウス4系統、高産生系マウス10系統の肝mRNAの分析によって低産生系マウスのC4mRNAには、B2RNA配列を含む異常挿入配列が存在する。低産生マウスC3H/HeJの遺伝子ライブラリ-(コスミド)から、C4遺伝子を分離して配列を調べたところ、13イントロンにはB2配列が存在し、2の配列を含むイントロン構造が、mRNAに挿入されていることが証明されたのである。
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