研究概要 |
ヒト補体欠損症のうち、重篤な免疫不全症状を呈するC3先天性欠損症および種々の悪性血液疾患に伴うHRF(CD59)欠損症の遺伝子機構を追究した。また、多様な遺伝性補体欠損症のモデルとして、マウスC4,Sex limited protein(Slp)の産生異常の分子機序を解析した。 1)ヒトC3欠損症の患者白血球(鹿児島大学佐野博士より分与)から、RNA,高分子DNAを分離し、さらにC3遺伝子を単離し、構造を解析した。C3遺伝子5'上流の転写活性は、psvoを用いたCATアツセイによって判定した。これらの結果は、C3欠損が転写以降一翻訳以前のレベルでの異常であることを強く示唆した。HRF遺伝子は、正常ヒト遺伝子ライブラリ-から単離し、構造解析を進めている。 2)Hー2^kハプロタイプのマウス系統に特有の補体C4低産生が、これまで全く未知の遺伝子機構によって惹起されていることを、初めて明らかにした。即ち、単離したC4遺伝子やC4mRNAの分析によって、マウスB2反復配列がC4遺伝子第13イントロン中央部にレトロトランスポゾン様機構によって挿入され、その結果、mRNAへのプロセシングに異常が生じたことを証明したのである。C4低産生マウスの肝臓C4mRNAには、例外なくB2反復配列を含むイントロン配列の一部が検出される。 Slpの異常産生(構成的発現)を示す野生マウス由来系統からC4,Slp遺伝子を分離し構造を解析し、さらにmRNAを分析することにより、Slpの構成的発現と長い間信じられていたものが、実は、C4とSlpの両遺伝子から由来するハイブリッド遺伝子産物であったことを証明した。補体の遺伝機構の重要問題に結着をつけることができた。
|