研究概要 |
視床下部ホルモンのうち,Tリンパ球の免疫応答に助長的に働くとされている甲状腺刺激ホルモン(サイロトロピン,TSH)放出ホルモン(TRH)の作用を,Tリンパ球およびBリンパ球のマイト-ゲン(Tリンパ球にはConA,Bリンパ球にはLPS)に対する増殖応答と,in vivoでの抗体産生およびトレランス(免疫寛容)誘導に対する影響を指標として研究した。また,非自己樹状細胞に対する増殖応答(MLR)についても調べた。 in vitro培養条件下の実験では,培養条件が好適で応答の高い場合にはTRHの影響は有意にはあるものの顕著ではないが,培養条件をやや劣化させて応答性をやや低下させたところへTRHを加えると,応答は顕著に増強されることが見られた。これは、培養液中に加えた血清には種々のホルモン等が含まれているので,応答の高い条件下では,さらに加えたTRHの効果が認め難いからであると思われる。in vivoの実験では,ヒトガンマグロブリンに対するトレランスの誘導が,インタ-ロイキン1で干渉されるという他研究者の結果を確認しつつ,TRHにも同様の効果があるか否かを検討した。結果はTRHでもトレランス誘導に干渉的であることが認められた。in vivoでの抗体産生においては,TRHの投与は顕著な効果を示さなかった。 in vitroの実験では,TRHの効果はTSHでおき代えられることがあり,ある場合には,リンパ球がTRHの刺激に応答してTSHを産生し,その自己受容や相互受容によって,免疫応答が高められているものと思われる。
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