研究概要 |
遺伝子の細胞特異的発現は,主としてプロモ-タ-領域およびエンハンサ-領域に存在するcisーacting elementsと,それらに作用するtransactingな転写調節蛋白との相互作用によって制御されている。また免疫グロブリン遺伝子のB細胞特異的な再配列(Gene rearrangement)あるいは免疫グロブリン遺伝子のクラススイッチの開始においても転写調節因子がその制御に深く関わっている。 我々はヒトH鎖遺伝子のエンハンサ-について,そのcisーacting elementsを解析し,二つのB細胞特異的転写に重要な役割を果たしていると考えられるモチ-フを新たに同定した。一つはヒトH鎖遺伝子JーCイントロンに存在するエンハンサ-内の5'側に見い出されたHE2/μBと呼ばれるエレメントであり,もう一つは同じくエンハンサ-の3'側に見い出され“E6"と我々が名付けたエレメントである。両エレメントは,それぞれ単独でB細胞時異的な遺伝子の転写を誘導する能力をもつ。さらに両エレメントとも,それぞれに特異的に結合する核蛋白がB細胞に存在する。現在,これら二つのB細胞特異的な,HE2/μB結合蛋白,E6結合蛋白をそれぞれコ-ドするcDNAのクロ-ニングを行っている。 興味深いことは,HE2/μBが比較的分化段階早期のB細胞においてより強いエンハンサ-活生を示すのに対して,E6は成熟B細胞および形質細胞においてより強いエンハンサ-活生を示す。即ち,分化段階の異なる細胞では同じH鎖エンハンサ-内でも,異ったエレメントが作用している事が示唆された。さらに,E6エレメントは,非B細胞内では非常に強いサイレンサ-として作用する事がわかった。
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