研究概要 |
リンフォカイン(IL3/IL2)によって,外因性抗原非依存性に造血前駆細胞より直接生成するTリンパ球について、その特性を解析した。その結果,(1)すべてαβ型T細胞レセプタ-(TCR)を発現するにも拘らずCD3^+CD4^-CD8^-(DN)形質を示す,(2)Vα,Vβ遺伝子の明らかな利用偏位(Vα4,Vβ2)を示す,(3)β鎖遺伝子結合部にN領域の挿入を欠失する,(4)約40%の株でαβ鎖共に全く同一偏基配列を示すこと,が判明した。以上よりリンフォカインによって脳腺外で生成するTリンパ球は,形質的に特異なサヴセットを形成し,そのTCRのレパ-トリ-はかなり限定されたものであり,さらにその主要部分は内因性の自己抗原に対応するものらしいことが推定された。同TCRのリガンド(抗原)同定,およびそのシグナル伝達機構解析を目的として,これらのハイブリド-マを作製した。興味深いことにこれらハイヴリド-マは,通常の胸腺由来T細胞のハイブリド-マと異なり,CD3の架橋によって細胞増殖の停止を示すが細胞死(アポプト-シス)には全く至らないことが判明した。この結果は,これらT細胞が,通常のT細胞とは部分的に異なるTCRシグナル伝達機構を有するらしいことを強く示唆するものである。これらが自己抗原を認識するらしい情報証拠と合わせ,自己寛容成立機構の有無という観点からさらに解析を進めたい。その他,活性化Tリンパ球に選択的に発現誘導されるLyー5抗原の新しいisoformについては,その生化学的解析を終え,現在そのTCRを介するシグナル伝達系への制御についての機能的解析の段階に入っている。また我々が発見した,リンパ球上の新しいPhosphatidyl inositol結合抗原(B7)についても,その遺伝子クロ-ニングによる構造決定を終了し,これもシグナル伝達における機能解析の段階へと進んでいる。
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