研究概要 |
(1)インタ-ロイキン2(IL2)に可逆的増殖反応を示す胎児肝由来細胞株(LFD14)より,増殖期に逆択的に発現される遺伝子Spaー1をクロ-ニングした。Spaー1遺伝子(cDNA)は,987b,p,より成る単一のORFを有し全く未知の新しい遺伝子であった。同塩基配列によりコ-ドされる蛋白の推定分子量は約35.5kdで,多数のセリン・スレオニン・キナ-ゼりん酸化部位とヘリックス・ル-プ・ヘリックス様のモチ-フを有し,新しいDNA結合蛋白であることが強く示唆された。Spaー1mRNAの発現はリンパ造血系臓器に特異的であり,胎生肝や胸腺には特に強く認められた。一連の細胞株を用いた実験から,Spaー1mRNAは各種リンフォカインや抗原レセプタ-を介する増殖シグナルに伴って,蛋白合成依存性に誘導されることが示された。以上より,Spaー1遺伝子産物は,リンパ球の各種の特異的な増殖因子を介する増殖反応のシグナル伝達に関与することが示唆された。 (2)CD3^+4^-8^-αβTCR^+形の特異的なT細胞について,T/Tハイブリド-マを作成し,TCRを介するシグナル伝達を解析した。多くのDNαβTハイブリド-マはTCR架橋によりIL3やIFNを産生するが,IL2は作らず,[Ca^<2+>]iも認められなかった。これらは又,増殖抑制はおこるものの,TCR媒介性アポプト-シスを全く示さなかった。それに対してごく一部のハイブリド-マはTCR架橋によって,通常のヘルパ-T細胞ハイブリド-マ同様,[Ca^<2+>]i,IL2産生を共に示し,同時にアポプト-シスを示した。以上より,Tリンパ球のTCRを介するシグナル伝達には,Ca^<2+>依存性および非依存性の少くとも2径路存在すること,CD3^+DNαβT細胞の多くは専ら後者を用いることが示唆された。
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