研究概要 |
食品,タバコ煙,室内空気あるいは大気などに広く分布する環境発癌物質である発癌性トリプトファン熱分解物のヒト健康への影響を評価する方法を確立することを目的として本研究は進められている。今年度は,発癌性トリプトファン熱分解物の暴露レベル評価方法として,ヘモグロビンー発癌物質付加体の直接測定法かあるいは,ヘモグロビンー発癌物質付加体から遊離させた発癌物質の測定が有用かを決定することを目的として実験を行った。発癌性トリプトファン熱分解物標品とヒトヘモグロビンの付加体を試験管内で作成し,直接測定の場合の感度と酸処理によって付加体から発癌性トリプトファン熱分解物を遊離させ,遊離型を測定した場合を比較検討した。測定方法は,3種のカラムを用いる3段階高速液体クロマトグラフ法により行った。この結果,ヘモグロビンー発癌物質付加体は,結合部位の異なる付加体が多種類形成され,しかも全体的な感度は著しく低いことが明らかとなった。一方,ヘモグロビンー発癌物質付加体を酸処理することにより得られる遊離型は,ほぼ一定の比率で,遊離型となる上に,測定感度は極めて良いことが判明した。以上の結果より,ヒトにおける発癌性トリプトファン熱分解物の暴露レベル評価方法としては,ヘモグロビンー発癌物質付加体から遊離させた発癌物質の測定が有用であることを確立できたと考えられる。この方法を基礎として,ヒトでの暴露レベル評価が可能かどうかの検討を始めている。
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