研究概要 |
前年度までの知見より,ヒトにおける発癌性トリプトファン熱分解物の暴露レベル評価方法としては,ヘモグロビンー発癌性トリプトファン熱分解物付加体から遊離させた発癌性トリプトファン熱分解物の測定が有用であることが明らかとなっている。本年度はこの知見を基礎としてこの評価方法により健常人と腎不全透折患者における暴露レベルを比較することが可能かどうかを検討した。腎不全透折患者は種々の発癌物質に高いレベルで暴露されていることがわかっているため対象とした。健常人8名,腎不全透折患者8名を対象として血漿中および赤血球中の発癌性トリプトファン熱分解物を高連液体クロマトグラフにより測定した。この結果,この発癌物質は健常人および腎不全透折患者共に赤血球中にその存在が確認され,腎不全透折患者では健常人に比して血漿および赤血球のいずれにおいてもこの発癌物質の濃度が有意に高かった。以上の結果は,発癌性トリプトファン熱分解物がヒト血漿および赤血球中に存在し,赤血球中のヘモグロビンに結合した発癌性トリプトファン熱分解物濃度が,暴露レベルを反映していることを示している。したがって,発癌性トリプトファン熱分解物の暴露レベル評価にはヘモグロビンー発癌性トリプトファン熱分解物付加体から遊離させた発癌性トリプトファン熱分解物の測定が有用であると結論された。以上の通り,今年度は当初の研究目標を達成できたものと考えられる。しか し,発癌性トリプトファン熱分解物の抽出方法が複雑であるため今後は抽出方法の改良が必要と考えられる。
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