発癌性トリプトファン熱分解物の暴露レベル評価方法を開発するため、動物実験により暴露レベル評価方法を検索した。ウサギに発癌性トリプトファン熱分解物を経口的に2mgから20mg投与し、経時的に血漿、赤血球、血小板中の発癌物質濃度を追跡した。この結果、血小板中の発癌物質濃度は投与後1日で急速に低下し、2週間以内に測定限界以下となった。また血漿中濃度は投与後2日間で急速に低下し、約2週間で測定限界以下に達した。しかし、赤血球中濃度は4週間後でも測定可能で、濃度の低下はゆるやかであった。また、経口的投与量と赤血球中濃度は比例しており、赤血球のヘモグロビンに結合した発癌性トリプトファン熱分解物は経口的暴露量を反映していると考えられた。一方、ヘモグロビン一発癌物質付加体からの発癌物質の遊離には0.5N塩酸の存在下で60℃に加熱することが至適であることを確立した。以上の知見を基礎としてヒトにおける暴露レベル評価方法としてヘモグロビン一発癌物質付加体が有用であるかどうかを健常人および腎不全透析患者を用いて検討した。腎不全患者は健常人に比して有意に高にレベルの発癌物質に暴露されているために対象とした。この結果、発癌性トリプトファン熱分解物がヒト血漿および赤血球中に存在し、暴露レベルが高いと考えられる腎不全患者において赤血球中の発癌性トリプトファン熱分解物レベルは、健常人に比して約2倍であった。以上の結果より、発癌性トリプトファン熱分解物のヒトにおける暴露レベル評価方法としては、ヘモグロビン一発癌物質付加体より確処理により遊離させた発癌物質の測定が有用であることを確立できたと考えられる。
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