研究概要 |
高血圧症、心疾患、糖尿病など多くの成人病は個人の食生活の歴史の縮図と考えられ、又、癌や感染症の発症でも個人の栄養状態に依存するところが多いことが明らかにされつつある。糖質、タンパク質、脂質の摂取バランス、これらをコントロ-ルするビタミンやミネラル栄養の問題は徐々に明らかにされてきている。そのうち特に、微量元素については、アンバランスな食生活、過度に精製された食品の摂取、近年医療技術の進歩による長期の経管・経腸栄養管理等から微量元素欠乏症発生の可能性がクロ-ズアップされてきている。しかし、生体内に極微量しか存在しない微量元素は測定の困難さ、混入防止用設備等の問題点があり、また、必要量と中毒量の幅も狭く、それらの研究は急務である。本研究ではこれらの見地から、微量元素(鉄Fe、銅Cu、マンガンMn)や超微量元素(セレンSe、錫Sn、ゲルマニウムGe、ルビジウムRb)の必要量と中毒量並びにこれまで知られていない生理作用について以下の検討を加えた。(1)日本人の微量元素摂取量状況調査と推定:各年齢層、種々の職種別、男女別に食事調査を行い、我々がこれまでに作成し、実測値との相関性も確認できた微量元素摂取量算出のためのパ-ソナルコンピュ-タ用プログラムを用いて、日本人1日当りの各種微量元素摂取量を算出、同時に、調査対象から任意抽出した食事サンプルを灰化後ICPを用いて微量元素量を実測し、ヒトのこれら微量元素必要量を推定した。(2)これまで測定が困難であった生体試料中超微量元素であるゲルマニウムの定量法を開発した。(3)微量元素(Fe,Cu,Mn,Se,Sn,Ge,Rb)含有量の異なった飼料または飲料水を与えて飼育したラットについて、成育状況、生理学的状態、血液・尿及び各種組織中ミネラル濃度並びに血清生化学検査、組織学的検討結果から摂取適量または必要量を推定を試みた。(3)健康人または種々の疾患をもつ老人患者の血液または尿中微量元素及びその他のミネラル濃度を測定し、微量元素栄養状態と各種疾患の関係を検討した。
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