研究概要 |
ウィスタ-系ラット雄42匹、雌45匹に、濃度10.8±3.3と9.8±3.0mg/m^3で空気力学的直径2.7μmのガラス繊維(GF・GB100R、東洋濾紙製)の曝露を4週間行い、曝露1、2、3、4週間目及び3.5、5.5、6、12カ月のクラアランス期間の後解剖し、肺内からのGFの排泄を調べた。 また、ウィスタ-系雄ラット27匹に濃度2.2±0.6mg/m^3で1年間の慢性曝露実験を行い、曝露直後及び1年間のクリアランス期間をおいた後に解剖し、肺内のGF量を測定した。 曝露期間中及びクリアランス期間中にはどの実験でも体重増加には曝露群と対照群との間に差はみられず、また肺、肝、腎、脾臓の各臓器重量も両群の間に差はなかった。 肺内のSi量は、亜急性実験では雌雄とも曝露が長くなるにつれて直線的に増加し、曝露直後にピ-クに達した後クリアランスの間に減少した。半減期は雌雄共に1.5カ月であった。これより肺内に取り込まれたGFは、徐々に肺から排泄されていることが示された。また実験中他の臓器中Si量は対照群と差が認められなかった。一方慢性実験では、曝露直後には1.5mgのGFが沈着しており、1年間のクリアランスをおいた後でもなお0.6mg程度残っていた。この結果より半減期は9.2カ月となり、亜急性の場合と比較すると非常に長いことがわかった。 肺内沈着率については、亜急性実験から雄4.5%、雌4.7%であった。既往の球形粒子状物質の同等径と比較してほぼ同じ値が得られた。一方、1年間の慢性実験から、長期曝露では肺からの排泄が著しく遅くなるという結果が得られた。この原因として、肺の排泄機構に障害が生じたことが推測された。しかし,この繊維に発がん性があるという結果は認められなかった。
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