研究概要 |
1)脳梗塞、虚血性心疾患の新しい危険因子としての血漿フィブリノーゲン値に影響を及ばす諸要因を検討してきた。本年は茨城、秋田、高知の3農村住民(男女計40〜69才3,880名)の血漿フィブリノーゲン値の測定を行い、2年度までに測定した都市住民(大阪4,262人)と比較した。4集団とも血漿フィブリノーゲン値と性、年齢、喫煙、魚介類摂取との関連を認めた。しかし、4集団間の血漿フィブリノーゲン値の差はこれら4因子の補正のみでは説明しえず、他にも関連要因の存在することがうかがわれた。 2)大阪の企業従業員及び2近郊都市の循環器検診受診者13,425人より最近2年間に発生した虚血性心疾患26例について、所属集団、性別、年齢をマッチさせた症例1:対照3のコホート内症例対照研究によって、リスクファクターの検討を行った。検討に用した要因は最大血圧値、血清総コレステロール値、血清HDLコレステロール値、血清グルコース、喫煙量、飲酒量、血清中ω3系脂肪酸、及びω6系脂肪酸である。多変量解析の結果、最大血圧値血清総コレステロール値、血清グルコース値、喫煙量は正の、血清HDLコレステロール値は負の危険因子として検出された。血清中ω3系脂肪酸は負の、ω6系脂肪酸は正の関連を認めたが、統計的には有意でなく、脂肪酸組成は虚血性心疾患の発症に影響するとしても、現状では上述の諸因子ほどには影響力は大きくないと考えられた。都市、農村の脳梗塞についても同様の検討を実施したが一定の傾向は得られていない。今後、症例を増し、脳梗塞の詳細な病型別に検討する必要がある。 3)秋田農村と米国ミネアポリス在住白人の47〜69才の男女293人(喫煙者、疾病罹患者を除く)について、血漿フィブリノーゲン値及びフィブリノーゲンβ鎖DNA多形の分析を行って比較した結果、白人が日本人比し血漿フィブリノーゲンが高値を示す要因の一つとして、魚介類摂取の少ないことと合わせて、フィブリノーゲンβ鎖のallele頻度分布の差異が考えられる。
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