平成3年度は、高血圧の実験モデル動物とされる高血圧自然発症ラット(SHR)を用い血漿エンドセリン(ETー1)濃度および腸間膜動脈から放出されるETー1を測定し、対照ラットと比較した。その結果血漿ETー1濃度はSHRおよび対照ラットとも加齢と共に増加したがいずれの週齢に於てもSHRでは対照に比べ高値を呈した。特に高血圧の発症前(5週齢)において血漿ETー1濃度がSHRで有意に高値(20vs13.8pg/ml)であったことは高血圧の維持のみならずその発症機構にも当該ペプチドの関与が示唆される。腸間膜灌流実験系に於てもSHRでETー1の放出量は多く血漿濃度を反映する結果であった。 一方、血管障害を来たしやすい糖尿病の実験モデル動物とされるストレプトゾトシン糖尿病ラット(STZーDM)においても同様の検討を行なった。その結果STXーDMでは対照ラットに比べ血漿ETー1濃度および腸間膜灌流液中のETー1量は有意に高値であった。このことはSTZーDMにおいては血管内皮の障害が生ずる結果、ET産生が亢進する事を示しており、血漿ETー1濃度が血管障害のマ-カ-となる可能性を示唆する成績である。
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