研究概要 |
1.Caucasianのアセチルコリン受容体α、β、γおよびδサブユニット遺伝子のDNA多型に関しては報告があるが日本人についてはそれらの頻度は不明である。そこで日本人の健常人DNAを制限酵素Kpn I,Pst I,Pvu II,Hinf I,Sac Iで消化し、ウシのアセチルコリン受容体δサブユニットcDNAをプロ-ブとしてサザンブロットハイブリダイゼイションを行った。その結果、Pvu II消化でのみ1.7kbと1.9kbに明確な多型性が認められた。1.7/1.7の組合せはCaucasian健常人では68%(36/53)で1.7/1.9の組合せは30%(16/53)であるのに対し日本人健常人では1.7/1.7が85%(83/98)で1.7/1.9が15%(15/98)であった。一方、日本人MG患者では1.7/1.7が88%(7/8)で1.7/1.9が12%(1/8)であった。この結果、日本人健常人と日本人MG患者との間にはδサブユニット遺伝子の多型性に関して相関は見られなかった。また、MG患者のサザンブロット解析を行ったが多型性とは異なる異常なバンドは見出されなかった。 2.ヒト胸腺腫のモデル動物BUF/Mnaラットの分子遺伝学的解析 ラットのセントロメアサテライトI DNAを胸腺腫DNAから回収してプラスミドベクタ-pUC19に組込んだ。ネガテイブスクリ-ニングで4クロ-ン(11M,5G,12F,C4)が得られ、塩基配列を決定した。これらのクロ-ンはいずれのサブユニットとも48ー64%しか塩基が一致しい変異クロ-ンであった。共通した変異は正常サブユニットのHinf Iサイト(GATTC)がEco RIサイト(GAATTC)に変異して新たな変異サブユニットを形成していることと保存配列TGGGAACの完全に欠失していることであった。一方、胸腺腫を発生しない系統であるACIラットの正常胸腺DNAでは異常なサテライトIは見出されなかった。サテライトIは染色体のセントロメアとテロメアに存在し、染色体安定性に寄与している。ヒトにも類似のαサテライトDNAがあり、ヒト胸腺腫にも同様の変化が予測される。
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