研究概要 |
モチリンは消化管粘膜から分泌されるペプチドホメモンで、消化・吸収の終了した空腹時に約100分間隔で血流中に放出され、先ず胃・上部十二指腸に一連の強収縮をひきおこし、これが順次下部消化管に伝播して空腸・回腸に溜った胃液・腸液を大腸の方に押しやる働きをする。モチリンによる消化管平滑筋収縮作用は、動物種によって大きく異なる。例えば、ブタやイヌから抽出したモチリンは、ラット,モルモットの消化管には全く作用しない。イヌでは空腹時強収縮をひきおこし、この作用はアトロピンによって抑制されるのでモチリンの作用はアセチルコリンによって仲介されていることが予想される。ところがウサギではこの強収縮はアトロピンでは抑制されず、モチリンの平滑筋ヘの直接作用が考えられる。この事実は平滑筋条片をマグヌス管につるして筋の収縮を調べるin vivoの潅流実験でも確認できる。しかし単離筋細胞を用いた培養実験では、アセチルコリンは筋収縮をひきおこすが、モチリンでは筋収縮を確認できていない。我々は、平滑筋膜上にモチリン受容体の存在を想定して、ウサギ平滑筋膜分画への ^<125>Iーモチリンの結合実験を行ったところ、膜の粗分画を用いると ^<125>Iーモチリンの結合を認めるが、精製した膜分画を用いると結合が認められないという奇妙な現象に遭遇した。我々は、モチリンが直接平滑筋に働くのではなく、神経に作用して、アセチルコリン以外の神経伝達物質を介して筋に作用している可能性を考慮しているが、同時に、1) ^<125>Iーモチリンの比活性を高める,2)13位のMetをLeuに置換して酸化をうけにくくさせる,3)第7位のTyrを除き、カルボキシル端にTyrを付加したモチリンを合成する,等の工夫により、生物活性がヨ-ド化によっても十分保持できるモチリンの作成を試みている。現在これらの修飾モチリンを用いて平滑膜分画との結合実験を継続している。
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