研究概要 |
1.生理的状況下でのmRNAの転写とペプチドホルモン動態について。:絶食中にsomatostatin mRNA,somatostatinとも増加し、摂食後の酸分泌・gastrin分泌を抑制するための準備状態を作っていると考えられる成績が得られた。すなわち、ラットに短時間摂食させた後絶食させると、摂食により一過性に増加した後減少していたsomatostatinは胃内に食物がなくなる12時間後から胃内pH、血清gastrinが一定であるにもかかわらず増加してくる。somatostatin mRNAについては、その変動がpeptide hormoneほど顕著にはみられないが増加の傾向が見られ第32回日本消化器病学会(1990,12,26奈良)で報告した。この点をnuclear runーon asssayなど別の方法でも確認したい。 2.胃生検材料を用いた研究:胃生検材料を用いてMcGuiganらの方法(J Clin Invest 60:51,1977)に準じて器官培養を行った。平成2年度は手技の確立を行い、萎縮性胃炎を伴わない正常な胃粘膜ではbombesin刺激でgastrin,somatostatinの分泌が増加することを確認した。十二指腸潰瘍ではgastrin分泌の亢進とsomatostatin分泌の減少がみられ、消化管ホルモン動態の異常が十二指腸瘍に見られることがin vitroの系でも認められた。次年度はこのことについて下記に述べる方法でmRNAレベルの検討を行う。 3.RNAの抽出法について:RNAは主としてGuanidinium isothiocyanate/Cscl法によって抽出されているが、Chomczynskiらの方法(Analytical Biochem 162:156,1987)に準拠して少量のサンプルからの抽出法を検討した。これによりGuanidinium isothiocyanate/CsCl法に匹敵する良質のRNAの抽出が可能となったため、生検材料を用いたmRNAの研究も可能となった。この方法によりNorthern blot analysisによるGRP HKATPase mRNA解析の確立を行なった。
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