研究課題/領域番号 |
02454235
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
太田 康幸 愛媛大学, 医学部, 教授 (40033055)
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研究分担者 |
道尭 浩二郎 愛媛大学, 医学部, 助手 (50209798)
堀池 典生 愛媛大学, 医学部, 助手 (90173624)
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キーワード | B型肝炎ウイルス(HBV) / 無症候性HBVキャリアの発症 / ウイルス変異 |
研究概要 |
無症候性HBVキャリアから肝炎が発症する際、HBV感染肝細胞に対する宿主側の免疫応答に起因した肝細胞壊死の発現が明らかにされてきたが、この際、ウイルス側の変異と肝細胞障害との関連に着目し、検討した報告は出ていない。私たちは今回、HBVの(領域に注目し、同部の変異と肝炎発症との関連性について検討した。対象はHBe抗原陽性無症候性キャリア(ASC)5例である。発症するまで観察しえた症例はうち53例で、全例HBe抗原持続陽性であった。患者血清370mlよりProteinaseKISDS法にてDNAを抽出し、HBVーDNAの1863ー1882と2355ー2374の2本のプライマ-を用いてpolynerase chain reaction(PCR)法を行ったのち、クロ-ニングを行い、dideoxy chainterminanation法にてpreーC領域からC領域にかけてのHBVDNAの塩基配列を決定した。ASCから慢性肝炎(CH)まで経時的に察しえた1症例について調べると、ASCの時期の4クロ-ン中1クロ-ンは、preCのwild typeであったが、3クロ-ンは、preーC領域のN未端28番目のコドンがTAGのストップコドンに変異したmutant typeであった。CHの時期に得られた6クロ-ンは、すべてwild typeであり、発症前後のC領域を比較すると4ケ所のアミノ酸置換を認めた。ASCより発症した他の2症例のpreーC領域では、1例ではASCの時期の4クロ-ン中1クロ-ンはmutant type、3クロ-ンはwild typeであった。他の1例では、発症前後のそれぞれ4クロ-ンはすべてwild typeであった。C領域では、2例とも発症後においては2241番目のCが欠損しており、それぞれ36カ所、37ケ所のアミノ酸変異を認めた。以上の結果は、無症候性HBVキャリアからの肝炎発症が、HBVのC領域変異ウイルスの出現と関連している可能性を示唆しており、新しい視点に立った発症機構の解明に見通しがついたと考えている。
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