研究概要 |
1)エタノール傷害の機序とアラキドン酸カスケードの関係について検討した。エタノールは濃度依存的、時間依存的に細胞傷害性を発揮した。エタノールによる細胞傷害はCa^<2+>の濃度に依存し、Ca^<2+>非存在下では傷害は軽度であった。また、dmPGE2はCa^<2+>存在下におけるエタノールの細胞傷害を10^<-5>Mの濃度で抑制したが、Ca^<2+>非存在下の傷害は抑制し得なかった。colchicine(COL)は単独では10^<-7>〜10^<-5>Mの範囲において細胞傷害性を示さなかったが、8%エタノールによる傷害を10^<-5>Mで増強した。このCOLによる傷害増強作用は、Ca^<2+>依存性であった。また、dmPGE2によるエタノール細胞傷害の抑制作用は、COLを前投与した場合消失した。dmPGE2は細胞からのCa^<2+>effluxを亢進させ、COLはこれを低下された。このdmPGE2によるCa^<2+>effluxの亢進作用は、COLを前投与した場合は消失した。一方、COLおよびdmPGE2はCa^<2+>influxには影響を及ぼさなかった。COLはmicrotubules(MT)の減少と局在の変化をもたらしたが、dmPGE2の同時投与はこれらを抑制した。以上のことから、エタノールによる細胞傷害にはCa^<2+>に依存しない部分と依存する部分とがあり、dmPGE2はCa^<2+>依存性のエタノール細胞傷害を抑制そることが判明した。dmPGE2によるエタノール細胞傷害抑制の機序として、MTを介する細胞からのCa^<2+>effluxの亢進が関与することが示唆された。 2)活性酸素による傷害とアラキドン酸カスケードの関係について検討した。その結果、hydrogen peroxideが最も細胞傷害性が強く、superoxideやhydroxyl radicalは傷害性が弱かった。フリーラジカルのPG・LT生合成能に対する影響としては、PGE2の生合成はhydrogen peroxideとhydroxyl radicalにより抑制され、superoxideにより刺激された。LTB4の生合成はhydroxyl radicalにより刺激され、SP-LT(LTC4,D4,E4)の生合成はhydrogen peroxide、hydroxyl radicalおよびsuperoxideにより刺激された。LT合成酵素阻害剤によりX-XOによる細胞傷害は濃度依存的に抑制された。すなわち、LTがフリーラジカルによる細胞傷害発生に関与している可能性が示唆された。
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