研究概要 |
当該年果において,ラット分離潅流肝を用いて以下の成績を収めた。まず,肝に過酸化脂質感受性蛍光プロ-ブであるdichlorofluorescin(DCFH)diacetateを負荷し,表面の小葉構築の蛍光像(460→535nm)をSITカメラで撮像した。また細胞障害の推移を解析する目的でpropidium iodide(PI)を潅流液内に添加し,障害細胞の核染色像(535→590nm)を同一視野内で撮像した。DCFHが細胞内で過酸化脂質と反応し酸化型の蛍光物質DCFとなる時の蛍光と,PI蛍光像をデジタル画像解析システム(ARGUSー200,浜松ホトニクス)により解析した。四塩化炭素(CCl_4)肝障害と,虚血性肝障害は病理組織学的に小葉中心性壊死を共に示すことが知られている。しかしながら,DCF/PI二重蛍光解析により以上のことが明らかとなった。1.四塩化炭素肝障害:(1)DCFはPIの上昇に先立ち,終末肝細静脈周囲から,上流の傍門脈域へ進展しcentrilobular patternを呈し,DCF蛍光の低下とともにPIが同部位で上昇し,centrilobular necrosisを呈した。(2)本反応はSKFー525Aの前処置で抑制され,cytochrome Pー450依存性の酸化ストレスが証明された。2.低潅流性虚血障害(25%Lowーflow hypoxia):(1)DCFは傍門脈域と終末肝細静脈の中間帯で始まり,下流へ拡大するが,PIは,これに遅れて中間帯で上昇しはじめ,徐々に下流へ拡がり,終末肝細静脈周辺に到達してcentrilobular necrosisを呈する。DCFは最下流では活性化されず,いわゆるzone3の肝細胞壊死は同部位での活性酸素生成による直接作用とは考えられないと思われた。代表的肝障害モデル2種において,活性酸素の存在証明と細胞障害の関係が明らかにされたのは世界で初めてのことである。また肝小葉内酸素供給動態の指標としてNADH自家蛍光の撮像システムを開発し,低潅流状態では中間帯〜中心静脈域にNADH蛍光の急上昇する領域があることも証明された。
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