研究概要 |
肉芽腫性肺疾患の形成機序を明らかにするために、気管支肺胞洗浄によって得られる肺の炎症細胞のサイトカイン産成をmRNAレベルで検討した。対象は健常者5人、サルコイド-シス患者20人、農夫肺症患者5人。これらの対象者において気管支肺胞洗浄を行い、主として肺胞マクロファ-ジとリンパ球からなる炎症細胞よりmRNAを抽出した。これにILー3,GMーCSF,あるいはMーCSF遺伝子の3'プライマ-を添加し、 reverse transcriptaseによってmRNAとcDNAとハイブリッドを形成した。ついで1本鎖にした。次いで5'プライマ-を用いて2本鎖DNAを合成した後、再び1本鎖にした。これにまた、3'側と5'側のプライマ-を作用させ増幅するというサイクルを30回繰り返し、もとのmRNAを約100万倍に増幅した。次いで電気泳動後、サザンブロットハイブリダイゼ-ションを行い、目的のバンドをそれぞれのサイトカインに対するアイソトープラベルしたプロ-ブにて検出した。その結果、サルコイド-シス患者では20人中15人でGMーCSFmRNAが検出された。一方健常者、農夫肺症患者では1例も検出されなかった。 またIL3は3群のいずれにおいても検出されず、MーCSFはすべての群で認められた。サルコイド-シスにおいてGMーCSF産生と疾患の活動性の関連を検討したところ、GMーCSF産生群では血清ACE値が非産ACE値が非産生群に比して有意に高く、BALFのリンパ球比率、CD4/8比も有意に高値を示した。また、産生群は肺外病変が多く、臨床経過も悪化ないし不変である例が多かった。以上よりGMーCSFがサルコイドーシス病の形成、維持に密接なかかわりを有していることが示唆された。
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