高い気道収縮活性を有するエンドセリン(ET)ー1の生体における生理作用を明らかにする目的で、ラット肺におけるETー1の含量と局在、モルモットでの経気道的ETー1投与による気道収縮、及びアナフィラキシ-とETー1の作用との関係について検討を行なった。 その結果、(1)ETー1は肺内に多量存在し、気道系においては主に気道上皮に局在していた。(2)経気道的投与によるETー1は、気道上皮のエンケファリナ-ゼにより分解され、エンケファリナ-ゼ阻害剤の存在下ではETー1による気道収縮は増強された。(3)アナフィラキシ-反応後では、ETー1は気道平滑筋を弛緩させ、その反応にはリポキシゲ-ゼ系アラキドン酸代謝産物が関与していると考えられた。 以上により気道系においては、ETー1は気道上皮細胞より遊離されるものと考えられた。気道上皮と気道平滑筋とは隣接組織であり、気道平滑筋にはETー1結合部位が多数存在することにより、気道上皮より遊離されたETー1は気道平滑筋に作用している可能性が高いと考えられた。また、気道系にはエンケファナ-ゼが存在し、種々のペプチドの分解に関与していることが知られているが、同酵素を阻害するとETー1による気道収縮が増強することにより、ETー1の作用がエンケファリナ-ゼにより調節されていると考えられた。一方アナフィラキシ-反応後では、ETー1は他の抑制性化学伝達物質を遊離し、気道平滑筋を弛緩させることを示された。今回の研究によりETー1の複雑な作用は気道上皮、分解系、及び炎症等の多因子により調節されていることが推察された。
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