研究概要 |
気道上皮細胞より産生されるエンドセリン(ET)は、その隣接組織である気道平滑筋に対して強力な収縮活性を有しており、気道平滑筋の張力調節の一端を担っている可能性が高い。しかし、気道上皮からのET遊離構に関しては、いまだ報告がない。今回我々は、培養気道上皮細胞からのET遊離に影響を及ぼす種々の化学伝達物質を検討した。ヒスタミンやアセチルコリン、プロスタグランジンF_<2a>、ロイコトリエンD_4、血小板活性化因子、ブラジキニンなどはET遊離に関しては影響を及ぼさなかったが、培養気道上皮細胞からのET遊離を亢進する化学伝達物質としては、プロスタグランジE_2,カルシトニン遺伝子関連ペプチドであった。サイトカインはほとんど遊離促進作用であり、遊離抑制作用を示すサイトカインは現在のところ得られていない。ET遊離を抑制する物質としては、副腎皮質ホルモンであった。最近、炎症細胞の存在下において培養気道上皮からのET遊離が亢進するという結果が得られつつあり、上記の結果から考慮すると、組織に炎症が惹起された状況下において、ET遊離が亢進するという可能性が推察される。今後種々の炎症細胞とET遊離との関係を検討してゆく予定でいる。 ETは、強力な気道収縮活性を示すと共に、in vitroでのアナフィラキシ-反応後においては、気道拡張活性を示す。今回、より鋭敏な弛緩反応検出システムを用いて、薬理学的に再検討すると共に、定量的評価を行った。その結果、前回得られた気道上皮依存性と考えられたET誘発弛緩反応は、気道上皮剥離により増強した。その弛緩反応は、ETー1、ETー2に特異的で、ETー3においては認められなかった。またその弛緩反応は、リポキシゲナ-ゼ阻害剤により抑制された。以上より、ETは気道上皮以外の組織より気道平滑筋弛緩物質を遊離し、その弛緩反応はET_A受容体を介しており、リポキシゲナ-ゼ系アラキドン酸代謝産物が関与しているものと考えられた。
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