研究概要 |
ニュ-モシスチス・カリニ(以下、カリニと略す)肺炎は後天性免疫不全症候群(AIDS)などの患者に多発し重症化しやすい。診断や治療法の開発が求められているが、培養系でカリニ病原体を増殖させることができないために,遺伝子組換え技法を用いた病原体蛋白質の量産系の確立を目指して研究を進めている。膜蛋白質分子であるGP115Kを組換えの標的物質に決め,アミノ酸配列の解読、その配列をもとに合成したオリゴヌクレオチッドプロ-ブを用いた標的遺伝子のクロ-ニングをこれまでに進めていた。今年度はクロ-ニングの作業の継続から始めて、採れたクロ-ンの性質を調べる実験を行った。まず、サザンハイブリダイゼ-ションにてカリニのゲノムDNAと反応するバンドが確認できていたので、この系を使ってミックスチャ-ブロ-ブのヌクレオチッドの組合せをさらに絞ることを行い、標識化合物の感度を上げた。次に、プロ-ブと反応するゲノムDNAフラグメント(Hind IIIで消化した場合1.2kbpに切断される)をゲルから回収してpUCベクタ-に組込み、先のプロ-ブを用いて大規模にスクリ-ニング作業を展開した。時間は費やしたが、ハイブリダイゼ-ションでプロ-ブと強く反応するコロニ-が数個採れた。その中から長さ1.2kbpの遺伝子が組み込まれているクロ-ンをゲル泳動で見分け、挿入された遺伝子の部位がプロ-ブと反応することをサザンDNAハ ブリダイゼ-ションで確めた。このクロ-ンの挿入フラグメントについて塩基配列を解読するための作業を進めて、5'、3'末端からそれぞれ250塩基程、ゲノムの遺伝子配列を明らかにした。次のステップに進み、mRNAから作成したカリニのcDNAライブラリ-からクロ-ニングを行っている。また、ゲノムの塩基配列の一部を応用してPCRを用いた系でcDNAをクロ-ニングする作業も平行して進めている。現在、部分的な合成が認められており、この遺伝子の性質を調べている。
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